HP OpenVMS Systems Documentation |
このドキュメントは,HP OpenVMS Alpha から HP OpenVMS Industry Standard 64 for Integrity Servers へアプリケーションを移行しようとしているアプリケーション開発者に対して,ポーティング作業の概要を説明しています。
改訂情報:新規ドキュメントです。
ソフトウェア・バージョン:OpenVMS I64 V 8.2
OpenVMS Alpha V 8.2
日本ヒューレット・パッカード株式会社
© Copyright 2005 Hewlett-Packard Development Company, L.P.
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原典:Porting Applications from HP OpenVMS Alpha to OpenVMS Industry Standard 64 for Integrity Servers
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『HP OpenVMS Alpha から OpenVMS I64 へのアプリケーション・ポーティング・ガイド』は, OpenVMS Alpha から OpenVMS I64 へアプリケーションを移行しようとするアプリケーション開発者を対象としています。
本書の構成は以下のとおりです。
第 1 章 では,OpenVMS I64 8.2 オペレーティング・システムについて概要を説明しています。
第 2 章 では, OpenVMS Alpha と OpenVMS I64 との基本的な相違点について説明しています。
第 3 章 では, OpenVMS I64 へのポーティングの準備として,アプリケーションを評価する作業の概要を説明しています。
第 4 章 では,移行のためにソース・モジュールに対して行う作業について説明します。ポーティングを行うアプリケーションのコンパイル,リンク,テスト,および本番システムへの導入についての情報も提供します。
第 5 章 では, OpenVMS I64 の開発環境について説明します。
第 6 章 では, OpenVMS I64 で利用できる主なコンパイラに関する注意事項を説明します。
第 7 章 では,ポーティングに関するその他の注意事項を説明します。
付録 A には,ポーティングを行う前にアプリケーションを評価するのに利用できるサンプル・チェックリストを示します。
付録 B には,OpenVMS Alpha でサポートされていて OpenVMS I64 ではサポートされていない HP レイヤード・プロダクトの一覧を示します。
付録 C では,アプリケーション固有のスタック切り替えコードを I64 へポーティングする際の KP ルーチンの使い方について説明します。
用語集 では,本書で使用されている重要な用語と省略形について説明します。
以下のドキュメントも参考に参考にしてください。
個々のコンパイラのドキュメントもポーティング作業の際に役に立ちます。
ホワイト・ペーパー『Intel® Itanium® における OpenVMS 浮動小数点演算について』では, OpenVMS Alpha と OpenVMS I64 の間での,浮動小数点のデータ型の違いについて説明しています。このホワイト・ペーパーは,次の場所から入手できます。
http://h50146.www5.hp.com/products/software/oe/openvms/technical/ |
HP OpenVMS の製品情報およびサービス情報については,以下の Web サイトを参照してください。
http://www.hp.com/go/openvms http://www.hp.com/jp/openvms |
本書の表記法は以下のとおりです。
| Ctrl/ x | Ctrl/ x という表記は,Ctrl キーを押しながら別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
| PF1 x | PF1 x という表記は,PF1 に定義されたキーを押してから,別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
| [Return] | 例の中で,キー名が四角で囲まれている場合には,キーボード上でそのキーを押すことを示します。テキストの中では,キー名は四角で囲まれていません。
HTML 形式のドキュメントでは,キー名は四角ではなく,括弧で囲まれています。 |
| ... | 例の中の水平方向の反復記号は,次のいずれかを示します。
|
| .
. . |
垂直方向の反復記号は,コードの例やコマンド形式の中の項目が省略されていることを示します。このように項目が省略されるのは,その項目が説明している内容にとって重要ではないからです。 |
| ( ) | コマンドの形式の説明において,括弧は,複数のオプションを選択した場合に,選択したオプションを括弧で囲まなければならないことを示しています。 |
| [ ] | コマンドの形式の説明において,大括弧で囲まれた要素は任意のオプションです。オプションをすべて選択しても,いずれか 1 つを選択しても,あるいは 1 つも選択しなくても構いません。ただし, OpenVMS ファイル指定のディレクトリ名の構文や,割り当て文の部分文字列指定の構文の中では,大括弧に囲まれた要素は省略できません。 |
| [|] | コマンド形式の説明では,括弧内の要素を分けている垂直棒線はオプションを 1 つまたは複数選択するか,または何も選択しないことを意味します。 |
| { } | コマンドの形式の説明において,中括弧で囲まれた要素は必須オプションです。いずれか1のオプションを指定しなければなりません。 |
| 太字 | 太字のテキストは,新しい用語,引数,属性,条件を示しています。 |
| italic text | イタリック体のテキストは,重要な情報を示します。また,システム・メッセージ ( たとえば内部エラー number),コマンド・ライン ( たとえば /PRODUCER= name),コマンド・パラメータ ( たとえば device-name) などの変数を示す場合にも使用されます。 |
| UPPERCASE TEXT | 英大文字のテキストは,コマンド,ルーチン名,ファイル名,ファイル保護コード名,システム特権の短縮形を示します。 |
| Monospace type | モノスペース・タイプの文字は,コード例および会話型の画面表示を示します。
C プログラミング言語では,テキスト中のモノスペース・タイプの文字は,キーワード,別々にコンパイルされた外部関数およびファイルの名前,構文の要約,または例に示される変数または識別子への参照などを示します。 |
| -- | コマンド形式の記述の最後,コマンド・ライン,コード・ラインにおいて,ハイフンは,要求に対する引数がその後の行に続くことを示します。 |
| 数字 | 特に明記しない限り,本文中の数字はすべて 10 進数です。10 進数以外 (2 進数,8 進数,16 進数) は,その旨を明記してあります。 |
この章では,Integrity Server (I64) 向けの OpenVMS Industry Standard 64 システムについて紹介し,移行プロセスの概要を示します。
詳細については,『HP OpenVMS Version 8.2 リリース・ノート [翻訳版]』を参照してください。
1.1 OpenVMS Industry Standard 64 for Integrity Servers
OpenVMS I64 アーキテクチャの 64 ビット・モデルおよび基本的なシステム機能は,Alpha アーキテクチャとほぼ同じです。そのため,OpenVMS Alpha で現在稼動しているアプリケーションの大部分は,ほとんど変更せず,簡単に I64 アーキテクチャへのポーティングが可能です。
OpenVMS Alpha と OpenVMS I64 のそれぞれの OpenVMS オペレーティング・システムは単一ソースのコード・ベースから開発されるため,各バージョンでソース・コードを個別に変更しなくても,ハードウェアに依存しない機能を両方のバージョンに組み込むことができます。その結果,評価テストに必要な時間を大幅に短縮でき,両方の OpenVMS プラットフォームで重要なアプリケーションを確実に提供することができます。
HP は,OpenVMS Alpha の推奨バージョンで現在「正常に動作」しているアプリケーションが OpenVMS I64 システムでも正常に動作するように,上位互換性を保証していくための厳密なポリシを設定しています。一般に公開されているシステム・サービスやライブラリ・インタフェースを使用しているアプリケーションであれば,ソース・コードをまったく変更せずに最新バージョンの OpenVMS I64 に移行できるはずです。
OpenVMS I64 は,OpenVMS の利用者が慣れ親しんだ見た目と使い勝手 (ルック・アンド・フィール) を備えています。新しいアーキテクチャに対応するためにわずかな変更は行っていますが, OpenVMS の基本構造および機能については違いはありません。
1.2 ポーティング・プロセスの概要
ここでは,ほとんどのアプリケーションに適用できるポーティング・プロセスの概要を示します。
1.2.1 アプリケーションの評価
アプリケーションの評価では,HP OpenVMS I64 への移行に必要な手順を確認します。評価の結果,以下の質問に対する回答から移行プランを作成できます。
評価は次の 3 段階に分かれます。
これらの評価を完了すると,効果的な移行プランを作成するのに必要な情報が得られます。
移行のためのアプリケーション評価の第 1 ステップでは,何を移行するのかを正確に判断します。このステップでは,アプリケーションだけでなく,アプリケーションを正常に実行するのに必要なあらゆる要素の洗い出しを行います。アプリケーションの評価を開始するには,以下の各項目を特定し,その場所を確認します。
これらのコンポーネントの多くは,すでに OpenVMS I64 への移行が完了しています。たとえば,以下のものが移行されています。
ビルド・プロシージャやテスト・ツールも含めて,アプリケーションおよび開発環境の移行は,お客様の責任で行っていただく必要があります。
アプリケーションの評価が完了したら, 第 4 章 の説明に従って,各モジュールおよびイメージの詳細な評価を行います。
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