この章では,AlphaServer 4100 で OpenVMS Galaxy コンピューティング環境を構築するための要件と手順について説明します。
7.1 はじめに
AlphaServer 4100 で OpenVMS Galaxy を構築するには, 構成およびハードウェアに関して,次の要件を十分理解しておく必要があります。
最大 2 つのインスタンス
AlphaServer 4100 では,OpenVMS のインスンタスを最大 2 つ実行できます。
コンソール・ファームウェア
OpenVMS バージョン 7.3 CD-ROM にある AlphaServer 4100 コンソール・ファームウェアが必要です。
コンソール・コマンド
第 5 章に示したコンソール・ヒントの他に,次のことにも注意してください。
コンソール・コマンドは一度に 1 つのインスタンスで入力します。
最初のコンソールで入力されたコマンドが完了するまで, 別のコンソールでコンソール・コマンドを入力しないでください。
AlphaServer 4100 のクロック
AlphaServer 4100 には 1 つのクロックがあります。OpenVMS Galaxy の場合, このことは 2 つのインスタンスを異なる時刻に実行できないことを意味します。 また,SET TIME コマンドは両方のインスタンスに影響します。しかし, かなり時間が経過するまで,このことは明らかにならない可能性があります。
コンソール・ポート
COM1 (上) はインスタンス 0 のコンソール・ポートです。 COM2 (下) はインスタンス 1 のコンソール・ポートです。
AlphaServer 8400 で OpenVMS Galaxy を構築する場合と異なり, 2 つ目のコンソール用に追加ハードウェアは必要ありません。 この目的で COM2 が使用されます。
CPU
CPU0 はインスタンス 0 のプライマリでなければなりません。 CPU1 はインスタンス 1 のプライマリでなければなりません。 CPU2 と 3 はオプションのセカンダリ CPU であり,マイグレードすることができます。
I/O アダプタ
下の 4 つの PCI スロットは IOD0 に属しています。 これはインスタンス 0 用の I/O アダプタです。 上の 4 つの PCI スロットは IOD1 に属しています。 これはインスタンス 1 用の I/O アダプタです。
ストレージ・コントローラ
KZPSA などのストレージ・コントローラが 2 つ必要です。 これらのコントローラは個別の Storageworks ボックスに収納することができ, SCSI クラスタとして稼働するために,同じボックスに収納することもできます。 各コントローラはそれぞれ IOD0 と IOD1 に接続されます。
ネットワーク・カード
各インスタンスでネットワーク・アクセスが必要な場合は, 各インスタンスに対してネットワーク・カード (DE500 など) が必要です。
カードは 1 枚ずつ,IOD0 と IOD1 に接続されます。
物理メモリ
AlphaServer 4100 の OpenVMS Galaxy では,メモリ・ホールがサポートされないため, OpenVMS Galaxy 環境用の物理メモリは連続していなければなりません。 AlphaServer 4100 でこのことを実現するには, 次のいずれかの条件を満たさなければなりません。
すべてのメモリ・モジュールが同じサイズでなければなりません (たとえば 1 GB)。
2 種類のサイズがある場合は, 1 つのモジュールだけを小さいサイズにすることができます。 大きいサイズのモジュールは番号の小さなスロットに挿入しなければなりません。
AlphaServer 4100 システムで OpenVMS Galaxy を構築するには,
この後の節の操作を行います。
7.2 ステップ 1: AlphaServer 4100 構成を確かめる
SHOW CONFIG コマンドを使用して,OpenVMS Galaxy 環境を構築するために使用する AlphaServer 4100 が,7.1 節 で説明した要件を 満たしているかどうか確認します。
コンソール・プロンプトに対して次のコマンドを入力します。
P00>>>show config
コンソールに次の情報が表示されます。
Console G53_75 OpenVMS PALcode V1.19-16, UNIX PALcode V1.21-24
Module Type Rev Name
System Motherboard 0 0000 mthrbrd0
Memory 512 MB EDO 0 0000 mem0
Memory 256 MB EDO 0 0000 mem1
CPU (Uncached) 0 0000 cpu0
CPU (Uncached) 0 0000 cpu1
Bridge (IOD0/IOD1) 600 0021 iod0/iod1
PCI Motherboard 8 0000 saddle0
CPU (Uncached) 0 0000 cpu2
CPU (Uncached) 0 0001 cpu3
Bus 0 iod0 (PCI0)
Slot Option Name Type Rev Name
1 PCEB 4828086 0005 pceb0
4 DEC KZPSA 81011 0000 pks1
5 DECchip 21040-AA 21011 0023 tulip1
Bus 1 pceb0 (EISA Bridge connected to iod0, slot 1)
Slot Option Name Type Rev Name
Bus 0 iod1 (PCI1)
Slot Option Name Type Rev Name
1 NCR 53C810 11000 0002 ncr0
2 DECchip 21040-AA 21011 0024 tulip0
3 DEC KZPSA 81011 0000 pks0
7.3 ステップ 2: OpenVMS Alpha Version 7.3-2 をインストールする
OpenVMS Galaxy ソフトウェアを実行するために, 特別なインストール手順は必要ありません。 Galaxy 機能は基本オペレーティング・システムに組み込まれており, この章で後述するコンソール・コマンドとシステム・パラメータ値を使用して, 有効または無効に設定することができます。
AlphaServer 4100 が SCSI クラスタに属していない場合は, 各インスタンスに対して 1 つずつ,2 つのシステム・ディスクに OpenVMS バージョン 7.3 をインストールしなければなりません。
AlphaServer 4100 がクラスタで共通のシステム・ディスクを持つ SCSI クラスタの一部である場合は, 1 つのシステム・ディスクに OpenVMS バージョン 7.3 をインストールします。
OpenVMS Alpha オペレーティング・システムのインストールの詳細については,『OpenVMS Alpha Version 7.3-2 Upgrade and Installation Manual』を参照してください。
7.4 ステップ 3: ファームウェアをアップグレードする
ファームウェアをアップグレードするには,
OpenVMS バージョン 7.3 の CD-ROM パッケージに含まれている「Alpha Systems Firmware Update Version 5.4 CD-ROM」を使用します。
ファームウェアを実際にインストールする前に,
パッケージに同梱されているリリース・ノートを参照してください。
7.5 ステップ 4: 環境変数を設定する
インスタンス 0 に対してプライマリ・コンソールを構成します。
CPU0 はインスタンス 0 のプライマリです。
Galaxy 環境変数を作成します。Galaxy 環境変数と各変数の一般的な値については,第 5 章を参照してください。
次の例は CPU 3 つと 256 MB + 192 MB + 64 MB に分割された 512 MB のメモリを装備した AlphaServer 4100 の場合の例です。
P00>>> create -nv lp_count 2
P00>>> create -nv lp_cpu_mask0 1
P00>>> create -nv lp_cpu_mask1 6
P00>>> create -nv lp_io_mask0 10
P00>>> create -nv lp_io_mask1 20
P00>>> create -nv lp_mem_size0 10000000
P00>>> create -nv lp_mem_size1 c000000
P00>>> create -nv lp_shared_mem_size 4000000
P00>>> set auto_action halt
CPU が 4 つあり,すべてのセカンダリ CPU をインスタンス 1 に割り当てる場合は, LP_CPU_MASK1 変数が E になります。 2 つのインスタンスで CPU を分割する場合は, CPU 0 がインスタンス 0 のプライマリ CPU になり, CPU 1 がインスタンス 1 のプライマリ CPU にならなければなりません。
MEM_SIZE 変数は,システム構成とメモリの分割方法に応じて異なります。
lp_io_mask0 は 10 に設定しなければなりません。
lp_io_mask1 は 20 に設定しなければなりません。
コンソール環境変数 AUTO_ACTION は HALT に設定しなければなりません。
これにより,システムはブートされず,Galaxy コマンドを入力できるようになります。
7.6 ステップ 5: システムを初期化し,コンソール装置を起動する
次のコマンドを入力して,システムを初期化し,Galaxy ファームウェアを起動します。
P00>>> init
P00>>> galaxy
自己診断テストを完了した後, Galaxy コマンドはインスタンス 1 でコンソールを起動します。
Galaxy が初めて起動されると,次のような複数のメッセージが表示されます。
CPU0 would not join
IOD0 and IOD1 did not pass the power-up self-test
これらのメッセージが表示されるのは,2 組の環境変数があり, Galaxy 変数は最初にインスタンス 1 に存在しないからです。
I/O バスが 2 つの Galaxy パーティション間で分割される場合は, 装置のポート名が変化することに注意してください。 たとえば,AlphaServer 4100 がシングル・システムの場合に, DKC300 として指定されるディスクは, OpenVMS Galaxy のパーティション 0 として構成した場合は,DKA300 になります。
インスタンス 1 のコンソールを構成します。
P01>>> create -nv lp_cpu_mask0 1
P01>>> create -nv lp_cpu_mask1 6
P01>>> create -nv lp_io_mask0 10
P01>>> create -nv lp_io_mask1 20
P01>>> create -nv lp_mem_size0 10000000
P01>>> create -nv lp_mem_size1 c000000
P01>>> create -nv lp_count 2
P01>>> create -nv lp_shared_mem_size 4000000
P01>>> set auto_action halt
次のコマンドを入力して,システムを初期化し, Galaxy ファームウェアを再起動します。
P00>>> init
コンソールに次の確認メッセージが表示されたら,Y と入力します。
Do you REALLY want to reset the Galaxy (Y/N)
システム・ルート,ブート装置,他の関連変数を構成します。
次の設定名は OpenVMS Engineering システムの場合の例です。 それぞれの環境の要件に適合するように,これらの変数は適宜変更してください。
P00>>> set boot_osflags 12,0
P00>>> set bootdef_dev dka0
P00>>> set boot_reset off !!! must be OFF !!!
P00>>> set ewa0_mode twisted
P01>>> set boot_osflags 11,0
P01>>> set bootdef_dev dkb200
P01>>> set boot_reset off !!! must be OFF !!!
P01>>> set ewa0_mode twisted
次のように,インスタンス 1 をブートします。
P01>>> boot
インスタンス 1 がブートされた後,システム・アカウントにログインし, SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT ファイルに次の行を挿入します。
GALAXY=1
SCS ノードと SCS システム ID の行が正しいことを確認してください。 次のように AUTOGEN を実行して,インスタンス 1 を Galaxy メンバとして構成し, システムを停止したままの状態にします。
$ @SYS$UPDATE:AUTOGEN GETDATA SHUTDOWN INITIAL
次の手順を実行して,インスタンス 0 をブートします。
P00>>> boot
インスタンス 0 がブートされた後,システム・アカウントにログインし, SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT ファイルに次の行を追加します。
GALAXY=1
SCS ノードと SCS システム ID の行が正しいことを確認してください。 次の手順で AUTOGEN を実行して,インスタンス 0 を Galaxy メンバとして構成し, システムを停止したままの状態にします。
$ @SYS$UPDATE:AUTOGEN GETDATA SHUTDOWN INITIAL
初期化またはシステムのパワー・サイクルで自動的に起動されるように, Galaxy を準備します。 両方のインスタンスで AUTO_ACTION 環境変数を RESTART に設定します。
P00>>> set auto_action restart
P01>>> set auto_action restart
プライマリ・コンソールから次のコマンドを入力して,Galaxy を再び初期化します。
P00>>> init
コンソールに次の確認メッセージが表示されたら,Y と入力します。
Do you REALLY want to reset the Galaxy (Y/N)
また,システムの電源をいったんオフにした後,オンにすることもできます。 このようにすると, 両方のインスタンスで Galaxy が自動的にブートストラップされます。
操作はこれで終了です。OpenVMS Galaxy が構築されました。