HP OpenVMS Systems Documentation |
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仮想 LAN (VLAN) は,LAN のブロードキャスト・ドメインをより小さな範囲にセグメント化するための仕組みです。 IEEE 802.1Q 規格では,VLAN の運用と動作が定義されています。 OpenVMS の実装では,一部の OpenVMS LAN ドライバで IEEE 802.1Q のサポートが追加されており,OpenVMS は,単一の LAN アダプタを使用して, VLAN のタグ付きパケットを LAN アプリケーションにルーティングできるようになりました。
VLAN を使用して以下のことができます。
OpenVMS では,VLAN は LAN アプリケーションに対して仮想 LAN デバイスを提供します。仮想 LAN デバイスは,単一の IEEE 802.1Q タグを物理 LAN デバイス上の通信に関連付けます。仮想 LAN デバイスを使用すると,物理 LAN デバイス上で任意の LAN アプリケーション (たとえば,SCA,DECnet,TCP/IP,LAT) を実行することができ, 図 3-1 に示すホスト間通信が可能です。
DECnet-Plus および DECnet Phase IV は,VLAN デバイス上で動作するように設定できます。 |
図 3-1 仮想 LAN
OpenVMS の VLAN は,新しいドライバ SYS$VLANDRIVER.EXE を通じて実装されています。このドライバは,仮想 LAN デバイスを提供します。また,既存の LAN ドライバも,VLAN タグを処理するように更新されています。 LANCP.EXE および LANACP.EXE は更新され,VLAN デバイスの作成と非アクティブ化,状態情報と設定情報の表示ができるようになりました。
OpenVMS の VLAN サブシステムは,特に性能に注意して設計されています。そのため,VLAN のサポートを使用することによる性能の低下はごくわずかです。
VLAN デバイスを設定する場合には,VLAN デバイスが物理 LAN デバイスと同じロック機構を共有する点に注意してください。たとえば,VLAN デバイスと基になっている物理 LAN デバイス上で OpenVMS クラスタ・プロトコルを同時に実行してもメリットはなく,実際には性能が低下します。
3.21.1 VLAN サポートの詳細
サポートされているすべての Gigabit および 10-Gb (I64 のみ) の LAN デバイスは,Alpha システムおよび I64 システム上で, VLAN トラフィックを処理することができます。
VLAN 関連のサポートに関するその他の詳細事項を以下に示します。
図 3-2 LAN フェールオーバのサポート
VLAN デバイスを作成する前に,それをホストする VLAN 対応の物理 LAN デバイスが VLAN 対応のスイッチに接続されていることを確認してください。また,選択したスイッチ・ポートが VLAN タグ付きのトラフィックを処理できるように構成されていることも確認してください。
以降の項では,その他の VLAN 管理の詳細について説明します。
3.21.2.1 スイッチ・ポートのプローブ
VLAN デバイスの管理を容易にするために,OpenVMS の LAN には IEEE 802.1Q 管理機能の限定的なサポートが含まれています。 LANCP 修飾子は,スイッチのポートをプローブし,VLAN 設定情報の一覧を表示するのに役立ちます。新しいコマンドは次のとおりです。
LANCP> SHOW DEVICE PHYSICAL-LAN-DEVICE/VLAN |
コマンドを入力すると,LANCP は IEEE 802.1Q GVRP (Generic Attribute Registration Protocol) VLAN Registration Protocol パケットをリッスンし,以下の内容を表示します。
以下に例を示します。
LANCP> SHOW DEVICE LLB /VLAN Listening for VLAN configuration on LLBO ...... VLAN tag 190 configured as VLB VLAN tag 206 configured as VLJ VLAN tag 207 not configured |
このコマンドでは,スイッチ・ポート上で GVRP 機能が有効になっている場合にのみ VLAN 情報が表示されます。
3.21.2.2 VLAN デバイスの作成
VLAN デバイスを作成するには,次の形式で LANCP コマンドを入力します。
LANCP> SET DEVICE VLc/VLAN_DEVICE=PHYSICAL-LAN-DEVICE/ TAG=value |
各項目の内容は以下のとおりです。
次に例を示します。
LANCP> SET DEVICE VLA/VLAN=EIB/TAG=42 |
このコマンドは,物理 LAN デバイスが存在しないか,物理 LAN デバイスが VLAN 対応でないか,VLAN タグが正しくないと失敗します。
このバージョンの OpenVMS では,説明文を LAN デバイスに関連付ける機能も追加されています。それには,LANCP SET コマンドまたは DEFINE DEVICE コマンドで修飾子 /DESCRIPTION=<quoted-string> を指定し,状況説明を追加します。たとえば,VLAN デバイスを "Finance VLAN" の一部として区別するには,次のコマンドを入力します。
LANCP> SET DEVICE VLA/DESCRIPTION="Finance VLAN" |
VLAN デバイスを非アクティブ化するには,次のコマンド形式を使用します。
LANCP> SET DEVICE VLc/NOVLAN |
デバイスが使用中の場合 (つまり,他のアプリケーションがそのデバイスを使用している場合) は,このコマンドは失敗します。
3.21.2.4 VLAN デバイス情報の表示
VLAN デバイスに関する情報を表示するには,LANCP コマンドの SHOW DEVICE および SHOW CONFIGURATION を使用します。以下に例を示します。
LANCP> SHOW DEVICE VLK/CHARACTERISTICS
Device Characteristics VLKO:
Value Characteristic
_____ ______________
...
"206" VLAN 802.1Q tag
"1" VLAN device flags
"Procurve 2315 P15" VLAN description
Link Up Link state
|
Device Parent Medium/User Version Link Speed Duplex Size MAC Address Current Address Type ------ ------ ----------- ------- ---- ----- ------ ---- ----------------- ----------------- ---- EWA0 Ethernet X-51 Up 1000 Full 1500 00-D0-59-61-72-F3 AA-00-04-00-1B-4D UTP DEGXA-TA EWB0 Ethernet X-51 Up 100 Full 1500 00-D0-59-61-72-D8 00-D0-59-61-72-D8 UTP DEGXA-TA EWC0 Ethernet X-59 Up 1000 Full 1500 00-60-CF-21-71-9C AA-00-00-21-71-9C UTP DEGPA-TA EWD0 Ethernet X-59 Up 1000 Full 1500 00-60-CF-20-9A-C6 00-60-CF-20-9A-C6 UTP DEGPA-TA EIA0 Ethernet X-16 Up 1000 Full 1500 00-12-79-9E-20-AE AA-00-04-00-1B-4D UTP AB352A EIB0 Ethernet X-16 Up 1000 Full 1500 00-12-79-9E-20-AF 00-12-79-9E-20-AF UTP AB352A LLB0 Ethernet X-19 Up 1000 Full 1500 AA-00-00-21-71-9C AA-00-00-21-71-9C DEGPA-TA VLB0 Ethernet X-BA1 Up 1000 Full 1500 AA-00-00-21-71-9C AA-00-00-21-71-9C LLB VLC0 Ethernet X-BA1 Up 1000 Full 1500 00-12-79-9E-20-AF 00-12-79-9E-20-AF UTP EIB VLD0 Ethernet X-BA1 Down 100 Full 1500 00-00-00-00-00-00 00-00-00-00-00-00 VLJ0 Ethernet X-BA1 Up 1000 Full 1500 AA-00-00-21-71-9C AA-00-00-21-71-9C LLB VLK0 Ethernet X-BA1 Up 1000 Full 1500 00-12-79-9E-20-AE AA-00-04-00-1B-4D UTP EIA |
ほとんどの VLAN の問題は設定に関するものです。 VLAN の問題をトラブルシューティングする際に確認すべき事柄の一覧を以下に示します。
$ ANALYZE/SYSTEM SDA> SHOW LAN/DEVICE=physical-device-name または SDA> LAN DEVICE/DEVICE=physical-device-name |
文字列 "VLAN" で示される,デバイス特性の VLAN ビット 4 が設定されている必要があります。
LANCP> SHOW DEVICE physical-device-name/VLAN |
このコマンドでは,スイッチ・ポートに設定されている VLAN タグが表示されます。次に,表示されたタグが,VLAN デバイスを作成する時に使用したものと同じであることを確認します。
LANCP> SHOW DEVICE vlan-device-name/INTERNAL_COUNTERS |
以下に例を示します。
LANCP> SHOW DEVICE VLC/INTERNAL_COUNTERS
Device Internal Counters VLCO:
Value Counter
_____ _______
--- Internal Driver Counters ---
" EIB" Device name
00000001 Device Flag 1 <online>
190 VLAN Tag ID
86514000 Physical LSB
11834 Failure status
FFFFFFFF 805E28CC Failure PC
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以下の内容を確認します。
$ ANALYZE/SYSTEM
SDA> LAN DEVICE/ADDRESS=physical LSB address
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OpenVMS の VLAN サポートについての詳細は,『OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
3.22 Volume Shadowing for OpenVMS
OpenVMS Version 8.3 では,HP Volume Shadowing for OpenVMS に以下の機能が追加されています。
ボリューム処理時の自動的なビットマップの作成とは,1 台以上のシャドウ・セット・メンバとの接続が失われ,シャドウ・メンバのタイムアウト時間内に回復しなかった場合に,既存の HBMM ビットマップがミニコピー・ビットマップとして機能できるようになることを意味します。
このような接続が失われると,シャドウ・セットのボリューム処理は一時停止されます。つまり,接続が回復するか,タイムアウト時間 (SHADOW_MBR_TMO の値で決まります) が満了するまで,書き込みと読み込みは一時的に停止されます。
タイムアウト時間内に接続が回復しないと,そのメンバはシャドウ・セットから除外され,残りのメンバに対する読み書き入出力が再開され,ビットマップによって書き込みが追跡されます。このビットマップの名前は HBMMx から rrsex に変更され,除外されたメンバ用のミニコピー・ビットマップとして機能します。
1 台または 2 台のメンバが除外され,すべてのメンバがシャドウ・セット中のメンバシップに復元された後も, HBMM ビットマップの機能は有効なままです。 HBMM ビットマップの機能は,シャドウ・セットが 3 台のメンバで構成され, 1 台のメンバが除外された場合にだけ役立ちます。 |
除外されたシャドウ・セット・メンバのいずれかに対する接続が回復すると,シャドウ・セットに再度マウントすることができます。除外されたメンバのメタデータが既存のビットマップと一致する場合は,それがミニコピー操作で使用され,メンバがシャドウ・セットに復帰します。 2 台目のシャドウ・セット・メンバも同時に除外された場合は,そのメンバもそのビットマップを使用することができます。メンバがシャドウ・セットに復帰した後,ビットマップの名前は HBMM ビットマップ名に戻ります。
1 台以上のメンバがシャドウ・セットから除外されている時間を最小限にする理由は以下のとおりです。
ボリューム処理時の自動的なビットマップ作成機能が追加されるまでは,接続が回復した後で除外されたメンバをシャドウ・セットに復帰させる作業には時間がかかりました。除外されたメンバは,フル・コピーを行わないと復帰させることができませんでした。ビットマップをミニコピー操作に利用できるようになったことにより,フル・コピー操作に比べて時間が大幅に短縮されました。
ボリューム処理時の自動的なビットマップ作成を有効にするには,そのシャドウ・セットの HBMM ポリシーを設定し,ポリシーに新しい MULTIUSE キーワードを追加します。詳細は,『HP OpenVMS Version 8.2 新機能説明書』の HBMM の章を参照してください。
3.22.2 SET SHADOW の新しい /RESET 修飾子
本リリースでは,SET SHADOW コマンドに /RESET 修飾子が追加されています。 SET SHADOW/RESET=COUNTERS は,シャドウ・セットごとに保持されているシャドウイング専用のカウンタをリセットします。
リセットして 0 にされるカウンタは以下のとおりです。
HBMM Reset Count
Copy Hotblocks
Copy Collisions
SCP Merge Repair Cnt
APP Merge Repair Cnt
これらのカウンタの現在の設定を表示するには,SHOW SHADOW コマンドを使用します。
HBMM Reset Count は,RESET_THRESHOLD に達した回数を表します。 RESET_THRESHOLD は,ビットマップをどの程度の頻度で作成するかを決める設定です。 HBMM Reset Count をクリアできることから,システム管理者は,しきい値リセットの頻度をより詳細に評価することができます。
SET SHADOW/RESET についての詳細は,『OpenVMS DCL ディクショナリ: N--Z』および DCL のヘルプを参照してください。
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