HP OpenVMS
HP OpenVMS
V8.2 新機能説明書
3.6.2 OpenVMS I64 システムでの Ultra SCSI HBA のサポート
OpenVMS I64 V8.2 では,次に示す,HP Integrity サーバ・システムの Ultra SCSI HBA をサポートしています。
- Ultra-160 SCSI デュアル・チャネル (A6829A)---HP rx4640 Integrity サーバの場合
- Ultra-320 SCSI デュアル・チャネル (A7173A)--- HP Integrity rx2600 サーバと HP Integrity rx1600 サーバに内蔵
外部 SCSI ストレージを使用するためには, DS2100,MSA30,または 4200/4300 シリーズの筐体に, Ultra-160 デュアル・ポート SCSI アダプタ (A6829A) を追加する必要があります。
注意
OpenVMS は, OpenVMS I64 システムだけで構成される OpenVMS Cluster システム,または OpenVMS I64 システムと OpenVMS Alpha システムが混在する OpenVMS Cluster システムでは,これらのアダプタを使った共用 SCSI ストレージをサポートしません。
|
弊社では,弊社が提供する HP-UX,Linux,および Microsoft XP 64 ビット・オペレーティング・システムなどのオペレーティング・システムでもこれらのアダプタをサポートします。
詳細は,HP Integrity サーバに付属するハードウェア・ドキュメントを参照してください。
3.7 System Analysis Tools の機能拡張
System Analysis Tools には,Alpha システムと I64 システムの両方で使用できる,いくつかの新しいコマンドと新機能が追加されました。新しいコマンドと機能を使うと,OpenVMS システムを簡単に解析できるようになります。
詳細は,『OpenVMS System Analysis Tools Manual』を参照してください。
3.7.1 追加または機能拡張された SDA コマンド
I64 で使うために,追加または機能拡張されたコマンドは次のとおりです。
- EVALUATE
- EXAMINE
- FLT
- FORMAT
- READ
- SET CPU
- SET OUTPUT
- SHOW
- CALL_FRAME
- CBB
- CEB
- CPU
- CRASH
- DEVICE
- EXCEPTION_FRAME
- EXECUTIVE
- GLOBAL_SECTION_TABLE
- GST
- IMAGE
- KFE
- PAGE_TABLE
- PARAMETER
- PROCESS
- STACK
- SWIS
- TQEIDX
- UNWIND
- VALIDATE TQEIDX
- WAIT
3.7.2 System Service Logging 機能
System Service Logging 機能によって,プロセス内のシステム・サービスのアクティビティが記録されます。これはシステムのトラブルシューティングに使用するために用意されています。
ロギング機能は,SET PROCESS/SSLOG=(STATE=ON) コマンドで有効にできます。ロギング機能は,SET PROCESS/SSLOG=(STATE=UNLOAD) または (STATE=OFF) コマンドで停止できます。ログに記録された情報は,ANALYZE/SSLOG コマンドを使って,表示できます。ログ情報が記録されるファイルのデフォルトは,SSLOG.DAT です。
詳細は,『OpenVMS System Analysis Tools Manual』を参照してください。
3.8 システム・パラメータ
以降の項で説明するシステム・パラメータは,Version 8.2 での新しいパラメータです。最後の項に,Version 8.2 で変更されたシステム・パラメータのリストを示します。詳細は,『OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
3.8.1 追加されたシステム・パラメータ
次のシステム・パラメータが新しく OpenVMS Version 8.2 で追加されました。
- ERLBUFFERPAG_S2
ERLBUFFERPAG_S2 は, ERRORLOGBUFF_S2 パラメータで要求された S2 空間エラー・ログ・バッファに割り当てる S2 空間メモリの量を指定します。
- ERRORLOGBUFF_S2
ERRORLOGBUFF_S2 は,システム・エラーのログ・エントリ用として予約された S2 空間エラー・ログ・バッファの数を指定します。各バッファは ERLBUFFERPAG_S2 で指定されるサイズを持ちます。 ERRORLOGBUFF_S2 のサイズが小さすぎる場合には,メッセージはエラー・ログ・ファイルに書き込まれません。 ERRORLOGBUFF_S2 のサイズが大きすぎる場合には,バッファによって不必要に多くの物理ページが専有される可能性があります。
- SCSI_ERROR_POLL
SCSI_ERROR_POLL を指定すると,OpenVMS は各 SCSI ディスクに対して 1 時間ごとに SCSI Test Unit Ready コマンドを発行します。これは,ラッチされたエラーがあれば,それを解除して,即座に報告させるためです。 SCSI_ERROR_POLL にはデフォルトで 1 が設定されていますが,ユーザは,0 を設定することで,エラー・ポーリング動作を停止させることができます。
- SHADOW_ENABLE
弊社で使用するために予約されている特別なパラメータです。
- SHADOW_HBMM_RTC (Alpha と I64 のみ)
SHADOW_HBMM_RTC は,システムがホスト・ベース・ミニマージ (HBMM) ビットマップを持つシャドウ・セットのリセットしきい値をチェックする時間間隔を制御します。リセットしきい値を超えている場合には,ビットマップがゼロ・クリアされます。
- SHADOW_PSM_DLY
多くのシステムにマウントされているシャドウ・セットで,コピー操作やマージ操作が必要な場合,シャドウィング機能では,全シャドウ・セット・メンバへのローカル接続を持つシステム上でこの操作を実行しようとします。シャドウィングでは,MSCP でサービスされるシャドウ・セット・メンバの数に基づいて時間遅延を加えることで,コピー操作やマージ操作を実行します。ローカル・メンバに対しては遅延が加算されないため, 1 つ以上のメンバが MSCP でサービスされているシステム (したがって遅延が発生する) よりも,すべてのシャドウ・セット・メンバにローカルにアクセスできるシステムのほうがコピー操作やマージ操作に適しています。
SHADOW_PSM_DLY パラメータを使用することで,システム管理者はシャドウィングによる遅延時間を調整することができます。 MSCP でサービスされる各シャドウ・セット・メンバの省略時の遅延時間は 30 秒で,遅延として指定できる範囲は 0 〜 65,535 秒です。
シャドウ・セットがマウントされているシステムが 1 つの場合は, SHADOW_PSM_DLY の値は,そのシャドウ・セットでの省略時のシャドウ・セット・メンバ回復遅延として使用されます。既存のシャドウ・セットでの SHADOW_PSM_DLY の変更方法は, SET SHADOW/RECOVERY_OPTIONS=DELAY_PER_SERVED_MEMBER=n コマンドを参照してください。
- SHADOW_REC_DLY (Alpha と I64 のみ)
SHADOW_REC_DLY の値が RECNXINTERVAL パラメータの値に加算され,システムがシャドウ・セットの優先順位に従って,システムにマウントされているシャドウ・セットに対する回復操作の管理を始めるまでに待つ時間が決定されます。
- SHADOW_SITE_ID (Alpha と I64 のみ)
SHADOW_SITE_ID を使用すると,システム管理者は,Volume Shadowing が,読み込み操作を実行するための最適のデバイスを選択し,性能を改善させるために使用する値のサイト値を定義できます。システム管理者は,システムにマウントされているすべてのシャドウ・セットに対するサイト値を定義できるようになりました。
- SYSSER_LOGGING (Alpha と I64 のみ)
SYSSER_LOGGING に 1 を設定すると,プロセスのシステム・サービス要求のロギングが有効になります。デフォルトでは 1 が設定されています。このパラメータは動的に変更することができます。
- TTY_DEFCHAR3 (Alpha と I64 のみ)
TTY_DEFCHAR3 を使用すると,OpenVMS のターミナル・ドライバが Ctrl/H を削除キーに対応付ける機能を有効にすることができます。この機能は,システム全体のデフォルトとして設定しないようにしてください。
| 特性 |
値 (16 進数字) |
機能 |
| TT3$M_BS
|
10
|
このビットを設定すると,OpenVMS のターミナル・コンソールは CTRL/H を削除キーに対応付けます。
|
- VHPT_SIZE (I64 のみ)
VHPT_SIZE には,システム内の各 CPU の仮想ハッシュ・ページ・テーブル (VHPT) 用に割り当てるメモリ・サイズを KB 単位で指定します。
- 0 の場合は,VHPT は割り当てられません。
- 1 の場合には,OpenVMS はシステム構成に合わせて適切なデフォルト・サイズを選択します。
3.8.2 変更されたシステム・パラメータ
OpenVMS Version 8.2 では,次のシステム・パラメータの定義が変更されました。
- BALSETCNT
- CHANNELCNT
- CRD_CONTROL
- DEVICE_NAMING
- ERLBUFFERPAGES
- ERRORLOGBUFFERS
- FAST_PATH_PORTS
- GALAXY
- GLX_SHM_REG
- LAN_FLAGS
- LCKMGR_MODE
- MMG_CTLFLAGS
- MULTITHREAD
- NISCS_MAX_PKTSZ
- PQL_MASTLM
- PQL_MENQLM
- SECURITY_POLICY
- SHADOW_MBR_TMO
- VCC_FLAGS
このリストで示したパラメータの他に,以前は
Alpha のみ となっていた多くのパラメータが,今回からは
Alpha と I64 となりました。
詳細は,『HP OpenVMS Version 8.2 リリース・ノート [翻訳版]』と『OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
3.9 データベースに追加されたタイムゾーン
OpenVMS Version 8.2 には,
ftp://elsie.nci.nih.gov/pub/にあるタイムゾーン公用データベース tzdata2003e に基づいた 540 種類のタイムゾーンが用意されています。既存のタイムゾーンはアップデートされ,データベースには新たに 204 種類のタイムゾーンが追加されました。新しいタイムゾーン名の一覧については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。
3.10 Volume Shadowing for OpenVMS の新機能
今回のリリースで Volume Shadowing for OpenVMS には,次の新機能が追加されました。
- ホスト・ベースのミニマージ (HBMM)
HBMM は,シャドウ・セットのマージ操作の効率を向上させるように設計されています。 HBMM では,ビットマップを使って,変更されたブロックをトレースします。 HBMM では,ビットマップがリセットされた後に変更されたシャドウ・セットのセクションだけを比較して一致させます。
HBMM のポリシー・キーワード RESET_THRESHOLD は,ビットマップのリセット条件となるまでに変更できるブロックの数を指定するために使います。新しいシステム・パラメータ SHADOW_HBMM_RTC は,変更ブロック数が RESET_THRESHOLD に設定された値を超えているかどうかを調べる頻度を指定するために使います。超えている場合には,ビットマップはリセットされます。 RESET_THRESHOLD の値を適切に設定すれば,HBMM の操作はフルマージよりもはるかに高速になります。
- マージ操作とコピー操作の優先順位付け
システムで障害が発生した場合に,クラスタに残っているシステムで実行されるマージ操作とコピー操作の順序を制御できるようになりました。 SET SHADOW コマンドに新しい /PRIORITY=n 修飾子を指定することで,マウントされているすべてのシャドウ・セットに異なる優先順位を割り当てることができます。最も重要なボリュームに高い優先順位を割り当てると,低い優先順位が割り当てられた重要度の低いボリュームよりも先にマージ操作とコピー操作が実行されます。
SHADOW_MAX_COPY の設定値は,クラスタ内の状況の変化に応じて,動的に増減させることができます。シャドウ・セットをディスマウントすることなく, SET SHADOW コマンドの新しい EVALUATE_RESOURCES 修飾子を使用して,システムのワークロードを,新しい SHADOW_MAX_COPY の値,または SET SHADOW/PRIORITY=n DSAn コマンドで指定した新しい優先順位に適応させることができます。
新しいシステム・パラメータ SHADOW_REC_DLY を使うと,システム障害が発生した後で各システムで実行されるマージ操作とコピー操作の順序を指定することができます。最適な回復操作を実行できるシステムに最小の遅延時間を割り当てることができます。
- Volume Shadowing for OpenVMS のライセンス方式
OpenVMS I64 システムの場合は,CPU 単位となるキャパシティ・ライセンスの購入が可能です。 OpenVMS Alpha Version 8.2 の場合は,引き続き,キャパシティ・ライセンスとディスク単位のラインセンスが提供されます。
OpenVMS I64 コンピュータ用のボリューム・シャドウィングのライセンスは,単独製品として,または EOE (Enterprise Operating Environment) と呼ばれる OpenVMS 製品群に含まれて提供されています。 EOE (Enterprise Operating Environment) の詳細は,『HP Operating Environments for OpenVMS Industry Standard 64 Version 8.2 for Integrity Servers Software Product Description (SPD 82.34.xx)』を参照してください。
ボリューム・シャドウィングのライセンス方式に関する詳細は,『HP Volume Shadowing for OpenVMS Software Product Description (SPD 27.29.xx)』を参照してください。ライセンス管理機能に関する詳細は, OpenVMS オペレーティング・システム SPD または『OpenVMS License Management Utility Manual』を参照してください。
HBMM の新機能についての詳細は, 第 6 章 を参照してください。
第 4 章
プログラミング機能
この章では,HP OpenVMS オペレーティング・システムのこのバージョンで追加されたアプリケーション・プログラミングおよびシステム・プログラミングに関連する新機能について説明します。
4.1 Analyze ユーティリティの機能拡張---(I64 のみ)
OpenVMS I64 システムの Analyze ユーティリティは,ELF (Executable and Linkable Format) オブジェクト・ファイルおよびイメージ・ファイルが解析できるように機能拡張されました。この機能拡張についての説明は,『OpenVMS DCL ディクショナリ』の ANALYZE/IMAGE コマンドと ANALYZE/OBJECT コマンドに追加されています。
OpenVMS I64 システムの Analyze ユーティリティは,ファイル内のレコード形式とランドマーク値を使って,アーキテクチャ・タイプと,ファイルがオブジェクト・ファイルとイメージ・ファイルのどちらであるかを調べます。 ANALYZE では /OBJECT 修飾子と /IMAGE 修飾子が指定できますが,これらの修飾子を指定しても解析対象が,指定したファイル・タイプのファイルに限定されるわけではありません。
Analyze ユーティリティの機能拡張についての詳細は,『OpenVMS DCL ディクショナリ』を参照してください。
4.2 OpenVMS I64 での OpenVMS 呼び出し規則の変更点
OpenVMS 呼び出し規則が,OpenVMS I64 を実行している Intel Itanium プロセッサのシステムで使用できるように変更されました。
Intel Itanium プロセッサ・ファミリでの OpenVMS 呼び出し規則は,OpenVMS VAX や Alpha での規約とは,ユーザに見える違いはないようにする一方で, Itanium ソフトウェア規約にできる限り従うように設計されています。 Itanium の規約は,従来の OpenVMS の設計との互換性の維持が必要な場合に限って変更されました。目標はアプリケーションと OpenVMS 自身の Itanium アーキテクチャへの移植のコストと難しさを最小化することでした。
詳細は,『OpenVMS Calling Standard』を参照してください。
4.3 Checksum ユーティリティ
Checksum ユーティリティは,OpenVMS のファイルについて,ファイル,イメージまたはオブジェクトのチェックサムを計算します。このユーティリティは,CHECKSUM コマンドで起動されます。このユーティリティは,I64,Alpha,および VAX プラットフォームで動作するようになりました。計算結果のチェックサムは,DCL シンボル CHECKSUM$CHECKSUM に設定されます。
このユーティリティについての詳細は,『OpenVMS DCL ディクショナリ』の CHECKSUM コマンドを参照してください。
4.3.1 I64 オブジェクトに対する CHECKSUM/OBJECT の機能強化
I64 オブジェクト (ELF オブジェクト) に対する CHECKSUM/OBJECT では,チェックサムの計算に以下の情報も含めるようになりました。
- EIDC (entity identification consistency check) 情報
- FPMODE (whole programming floating-point mode) 情報
EIDC フィールドまたは FPMODE フィールドがオブジェクト・ファイル内に存在している場合,以前のバージョンの Checksum ユーティリティによる I64 オブジェクトのチェックサム計算結果と OpenVMS Version 8.2 の Checksum での計算結果が異なります。
違いは ".note" セクションのチェックサムからわかります。
以前のバージョンでは,このセクションのチェックサムは計算されていませんでしたが,新しいバージョンでは,この情報が存在する場合にそのチェックサムが計算されるようになりました。この動作の結果を表示するには /SHOW=SECTIONS 修飾子を使用してください。
CHECKSUM/IMAGE には影響しません。イメージでは, ".note" セクションに EIDC 情報や FPMODE 情報はありません。
ファイル・チェックサム (CHECKSUM に /IMAGE や /OBJECT の指定なし) にも影響はありません。ファイル・チェクサムでは,ファイル全体またはレコード構造に従ったデータを使用してチェックサムが計算されます。
4.4 C ランタイム・ライブラリの機能拡張
以降の項では,OpenVMS Version 8.2 に含まれる C ランタイム・ライブラリ (RTL) の機能拡張について説明します。この機能拡張により,UNIX への移植性,標準規格への準拠性,追加ユーザ制御機能の選択における柔軟性が改善されます。また,新しい C RTL 関数が追加されました。詳細は,『OpenVMS HP C ランタイム・ライブラリ・リファレンス・マニュアル (上下巻)』を参照してください。