HP OpenVMS Systems Documentation |
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この章では,日本語 OpenVMS の以前のバージョンでアップデートされた機能について説明します。
A.1 XTPU の UTF-8 端末入出力
V7.3-2
XTPU が端末に送受信するコード (キーボード・コードセット) を UTF-8 に設定できるようになりました。次のコマンドで設定します。
[Do] tpu set(keyboard_codeset,utf8)
A.2 ロケールデータファイルの提供
V7.3-2
DEC 漢字 2000 コードセットをサポートするロケールである deckanji2000 のロケール定義ファイルおよびコンバータは, XPG4 ロケール・データ・ファイル・キットで提供されることになりました。これらのファイルはオペレーティング・システムのインストレーションの際に「日本語サポート」を選択した場合にインストールされます。
A.3 日本語 ESCPトランスレータ
V7.3-1
日本語 ESCPトランスレータが日本語 OpenVMS にバンドルして提供されるようになりました。
日本語 ESCP トランスレータは OpenVMS システムから PRINT コマンドを発行して,ESC/P プリンタ (EPSON VP-1800 など) で印刷を行うためのソフトウェアです。詳しくは『日本語 ESCP トランスレータソフトウェア仕様書』を参照してください。
A.4 日本語環境設定ユーティリティ (JSY$CONTROL)
V7.3
日本語 OpenVMS バージョン 7.2 で追加された JSY$CONTROL ユーティリティは,バージョン 7.3 で機能を大幅に拡張し,総合的な日本語環境設定ユーティリティになりました。
日本語環境設定ユーティリティ(JSY$CONTROL) は,日本語 OpenVMS の持つ,各種の日本語機能の設定を一括して制御します。以下の機能を制御できます。
日本語ファイル名の制御 (JSY$CONTROL)
日本語端末ドライバの制御 (KANJIGEN)
日本語テキスト表示ユーティリティの制御 (TYPE /PAGE=SAVE)
日本語 EVE エディタの制御 (JEVE/XTPU)
個人辞書の制御 (JSYKOJIN.JISHO, JSY$LEARN.DAT)
ロケールの制御 (LANG)
日本語ヘルプの制御 (JSY$SWITCH.COM)
IMLIB の制御 (IM$PROFILE)
日本語画面管理ライブラリの制御 (JSMG)
JSY$CONTROL ユーティリティでは,上記の機能を以下のカテゴリーに分けて,それぞれを一括して設定,変更,表示する機能を提供します。
日本語ファイル名の制御
ロケールの制御
かな漢字変換の制御
詳しくは『日本語ユーティリティ 利用者の手引き』を参照してください。
A.5 JIS X0213 第 3 水準サポート
2000 年 1 月に制定された JIS X 0213「 7 ビット及び 8 ビットの 2 バイト情報交換用符号化拡張漢字集合」をサポートします。なお日本語 OpenVMS V7.3 では第 3 水準 (Level 3) のみのサポートです。第 4 水準 (Level 4) については将来のバージョンでのサポートとなります。
A.5.1 新しいコードセットの仕様
日本語 OpenVMS V7.3 では,新しく DEC 漢字 2000 コードセットおよび deckanji2000 ロケールをサポートします。
DEC 漢字 2000 コードセットは,従来の Super DEC 漢字コードセットから JIS 補助漢字 (JIS X 0212) を取り除き,かわって JIS X 0213 を追加したものです。
| 文字集合 | コード領域 |
|---|---|
| C0 Control | 00 〜 1F |
| ASCII/JIS X 0201 LH | 20 〜 7F |
| C1 Control | 80 〜 9F |
| 第 1 〜第 3 水準 | A1A1 〜 FEFE |
| 第 4 水準 (future support) | SS3 A1A1 〜 SS3 FEFE |
| 半角カナ | SS2 A1 〜 SS2 DF |
| ユーザー定義文字 | A121 〜 FE7E |
なお,半角カナは継続してサポートします。
A.5.2 新しいロケールの仕様
日本語 OpenVMS V7.3 では新たに DEC 漢字 2000 コードセットのためのロケールとして deckanji2000 をサポートします。現在のロケールを deckanji2000 に設定すると,ロケールをサポートするアプリケーションで DEC 漢字 2000 コードセットを使用できます。
以下のロケール定義ファイルを提供します。
日本語 Compaq DECwindowws/Motif の漢字端末エミュレータ (JDECterm) 上で JIS X 0213 第 3 水準文字を表示するためのサンプル・フォント・ファイルを JSY$EXAMPLES ディレクトリに提供します。Level3 部分は,平成明朝フォントです。
サンプル・フォント・ファイルを有効にするためには,システム・マネージャ・アカウントでログインし,以下のコマンドを入力します。
@ JSY$JISLEVEL3TRIAL.COM ENABLE
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コマンド実行後に起動される漢字端末エミュレータでは,サンプル・フォント・ファイルが有効になります。なお,この設定はシステム全体で有効になるため,特定のユーザのみがサンプル・フォント・ファイルを使うことはできません。
サンプル・フォント・ファイルを無効にするためには,システム・マネージャ・アカウントでログインし,以下のコマンドを入力します。
@ JSY$JISLEVEL3TRIAL.COM DISABLE
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この書体は,日本ヒューレット・パッカード株式会社が(財)日本規格協会と使用許諾契約を締結して使用しているものです。フォントとして無断複製することは禁止されています。 |
日本語 Windows ME/98 上のサード・パーティ製ターミナル・エミュレータで, JIS X 0213 第 3 水準文字を表示するためには,以下のフリーのフォントをご利用ください。
日本語 OpenVMS の持つ以下のユーティリティでは JIS X 0213 第 3 水準をサポートします。
JSYSHR.EXE の持つ各種日本語ルーチンは,JIS X 0213 第 3 水準をサポートします。以下のルーチンは JIS X 0213 第 3 水準サポートのために内部が拡張されています。
JIS X 0213 第 3 水準文字が追加されたシステム辞書 (JSY$TANGO.JISHO) をサンプルとして提供します。サンプル辞書を使用するためには,次のように論理名を定義してください。
$ DEFINE JSY$TANGO JSY$EXAMPLES:JSYTANGO.JISHO
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論理名はプロセス単位に設定できます。サンプル辞書の使用を終了したら,論理名を削除してください。
なお,サンプル用システム辞書を使用すると個人辞書ファイル (JSYKOJIN.JISHO) に JIS X 0213 第 3 水準文字が学習されるため,論理名を削除しても第 3 水準文字が漢字変換の候補として表示されてしまう場合があります。個人辞書への学習を避けるためには,論理名 JSY$KOJIN_MODE を 2 に定義して,個人辞書参照モードに設定してください。
システム辞書と個人辞書の詳細については『日本語ライブラリ利用者の手引き』の「かな漢字変換辞書」の節を参照してください。
A.6 JMAIL の機能拡張と問題点の修正
V7.3
日本語 OpenVMS V7.3 の JMAIL は,deckanji2000 コードセット対応のための拡張と,日本語ファイル名のサポートの充実のための修正が行なわれています。
A.6.1 deckanji2000 コードセットのサポート
日本語 OpenVMS V7.3 でサポートされた deckanji2000 コードセットをサポートします。メールの本文中に JIS X 0213 第 3 水準文字を含んだメールを送受信できます。ただし,サポートするのは DECnet の MAIL11 プロトコルを利用した場合のみです。SMTP ではサポートされません。
メール中に第 3 水準文字を含める場合は,あらかじめメールを受け取る相手が第 3 水準文字を読むことができることを確認してください。 |
JMAIL のコマンドライン (JMAIL> プロンプト ) での日本語かな漢字変換ができるようになりました。これにより日本語ファイル名の入力が可能になります。
この拡張により JMAIL> プロンプトでの入力は,論理名 IM$PROFILE で指定された日本語かな漢字変換キーパッドに従います。
論理名 IM$PROFILE に TARO キーパッドが指定されている場合など, JMAIL> プロンプトでの日本語かな漢字変換による問題が発生する場合には,論理名 JMAIL$COMMAND_CODESET を OLD と定義することで,漢字変換キーパッドを無効にすることができます。
A.6.3 日本語ファイル名の最大長の拡張
SEND や EXTRACT 等のコマンドに指定できるパス指定は,最大 4,095 バイト ( すべて全角文字の場合は 2047 文字 ) までサポートします。またファイル名の最大長は,XQP と同じ全角 118 文字をサポートします。
A.6.4 日本語ファイル名の署名ファイルへの使用
署名ファイルに対して日本語ファイル名を指定できます。
【例】
JMAIL> SET SIGNATURE_FILE USER$:[MYDIR]営業2課^_山田太郎.TXT
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EXTRACT や EDIT 等のコマンドの _File: プロンプトに対して半角カナを入力しようとすると,入力が無視されてしまう問題を解決しました。
JMAIL> プロンプトや _File: プロンプトなどで非常に長い日本語を入力した場合, 2 行目以降のカラム位置の計算が不正確になったり,または 2 行目に改行されずに何もエコーバックされなくなる等の問題が発生していましたが,これらの問題は全て解決されています。
A.7 日本語ファイル名の拡張
V7.3
日本語 OpenVMS V7.2 でサポートした日本語ファイル名が拡張され,より使いやすくなりました。
A.7.1 NAM での最大パス長の拡張
RMS の従来のデータ構造体である NAM を使った場合,日本語 OpenVMS V7.2 および V7.2-1 では最大 42 文字までの日本語パス指定しかサポートされていませんでした。
V7.3 ではこれを拡張し,NAM の最大データ長である 255 バイト ( すべて全角文字の場合は 127 文字 ) のパス指定をサポートします。
またファイル名の最大長は,XQP と同じ全角 118 文字をサポートします。
A.7.2 NAML での最大パス長の拡張
NAML を使った場合,日本語 OpenVMS V7.2 および V7.2-1 では最大 72 文字までの日本語パス指定しかサポートされていませんでした。
V7.3 ではこれを拡張し,NAML の最大データ長である 4,095 バイト ( すべて全角文字の場合は 2047 文字 ) のパス指定をサポートします。
またファイル名の最大長は,XQP と同じ全角 118 文字をサポートします。
A.7.3 $CVT_FILENAME 問題点の修正
RMS へ日本語ファイル名サポート機能を追加した際に発生した, $CVT_FILENAME システム・サービスの動作不整合の問題を解決しました。具体的には Unicode と VTF-7 のコード変換が正常に動作するように修正されています。
A.7.4 サブプロセスでの日本語ファイル名
DCL コマンド等を用いてサブプロセスを作成した場合,親プロセスの日本語ファイル名の設定を引き継ぐようになりました。
V7.2 および V7.2-1 では親プロセスの設定を引き継がなかったため,ユーザは日本語ファイル名を再度有効にする等の操作が必要でした。 V7.3 からは,そのような作業は不要になります。
A.7.5 JSYSHR でのファイル名変換ルーチン
Unicode と Super DEC Kanji コードとの間のコード変換を行うルーチン郡を JSYSHR.EXE に追加し,一般ユーザから使用できるようにしました。
これらのルーチンは iconv と異なり,日本語ファイル名専用です。日本語 OpenVMS がサポートする日本語ファイル名は, WindowsNT のファイルシステム適合するように設計されており,文字コードの変換規則が iconv と異なります。そのためユーザがファイル名に使用する目的で Unicode と Super DEC Kanji コードとの間のコード変換を行う場合は,このルーチンを使う必要があります。
int jsy$rms_user_vtf7 ( const char *src, int srclen,
char *out, int outlen,
int *retlen,
const char *codeset, int codeset-len);
int jsy$rms_vtf7_user ( const char *src, int srclen,
char *out, int outlen,
int *retlen,
const char *codeset, int codeset-len);
int jlb$rms_user_vtf7 ( struct descriptor *out,
const struct descriptor *src,
unsigned short *retlen,
const struct descriptor *codeset);
int jlb$rms_vtf7_user ( struct descriptor *out,
const struct descriptor *src,
unsigned short *retlen,
const struct descriptor *codeset);
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詳しくは『日本語ライブラリ 利用者の手引き』を参照してください。
A.7.6 ISO Latin-1 文字
表 A-2 にある文字が日本語ファイル名として使用できるようになりました。これらの文字は Unicode 上では ISO Latin-1 文字として表現されるため,以前は日本語ファイル名に使用すると問題を発生していました。
| 文字 | SDK | Unicode |
|---|---|---|
| ´ | A1AD | 00B4 |
| ¨ | A1AF | 00A8 |
| ± | A1DE | 00B1 |
| × | A1DF | 00D7 |
| ÷ | A1E0 | 00F7 |
| ° | A1EB | 00B0 |
| § | A1F8 | 00A7 |
| ¶ | A2F9 | 00B6 |
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