この章では,OpenVMS を OpenVMS Cluster 環境でインストールする前に把握しておくべき情報と実行すべき準備作業の手順を示します。
OpenVMS Cluster 環境でインストールを行わない場合は,第 3 章へ進んでください。
2.1 OpenVMS Cluster 環境でのインストールの準備作業
表 2-1
に,OpenVMS Cluster 環境でインストールする前に実施すべき作業を示します。このチェックリストに従って,すべての作業を確実に実施してください。
表 2-1: インストール前の作業チェックリスト
| 作業 | 説明の記載箇所 | |
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OpenVMS オペレーティング・システムと OpenVMS Cluster の関連ドキュメントに目を通す。 | 2.2 節 |
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OpenVMS Cluster システムについて,バージョンの混在,アーキテクチャの混在,および移行サポートについてよく理解する。 | 2.3 節 |
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インストール中にシステム・プロンプトが表示されて入力を求められるので,その情報を事前に用意しておく。 | 2.4 節 |
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ターゲット・システム・ディスクがクラスタ内の他の場所にマウントされていないことを確認する。 | 2.5 節 |
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インストールを開始する。 | 第 3 章 |
2.2 OpenVMS Cluster ドキュメントおよび関連資料の調査
OpenVMS Cluster 環境で OpenVMS オペレーティング・システムをインストールする前に,以下のドキュメントに記載されている OpenVMS Cluster 関連のすべての情報に必ず目を通してください。
OpenVMS V8.3 のドキュメント
『Cover Letter for HP OpenVMS Version 8.3』, 『日本語 OpenVMS V8.3 をご使用のお客様へ』,およびソフトウェア仕様書
『HP OpenVMS V8.3 リリース・ノート[翻訳版]』
『HP OpenVMS V8.3 新機能説明書』
OpenVMS V8.2 のドキュメント
次のドキュメントは改訂されていませんが,その内容は OpenVMS V8.3 にもそのまま適用されます。
『HP OpenVMS Cluster システム』
『HP OpenVMS Cluster 構成ガイド』
ネットワーク管理者やシステム管理者にも,必ず相談してください。
2.3 OpenVMS Cluster システムでの複合バージョンのサポート
OpenVMS Cluster システムでは,バージョンの異なるシステムが混在する構成 (複合バージョン) やアーキテクチャの異なるシステムが混在する構成 (複合アーキテクチャ) が,保証サポートと移行サポートという 2 つのレベルでサポートされています。
保証サポート ― OpenVMS Cluster で弊社の指定する 2 つのバージョンが混在することを正式に認定するとともに,その構成を使用している顧客から通知されたすべての問題に対応します。
移行サポート ― 今まで使用していた OpenVMS VAX,OpenVMS Alpha,または OpenVMS I64 から新しいバージョンへ段階的に移行している過程で,特定バージョンの併用を認定するサポートです。 このサポートでもお客様から寄せられた問題に対応しますが,その解決策のひとつとして,保証構成へ移行するようにお願いすることがあります (特別なケースは除きます)。 移行サポートは移行前の OpenVMS Cluster と移行後の OpenVMS Cluster がペアで保証されている場合に役立ちます。 OpenVMS V8.3 へアップグレード可能な最も古いバージョンについては,4.3.1 項を参照してください。
表 2-2
に,クラスタで保証サポートの対象となるバージョンの組み合わせを示します (同じクラスタ内で OpenVMS I64 システム と OpenVMS VAX システムを混在させることはできません)。
表 2-2: クラスタで保証サポートの対象となるバージョンの組み合わせ
| 使用しているシステム | 保証される組み合わせ |
OpenVMS Alpha V8.3 |
OpenVMS Alpha V8.3 と OpenVMS I64 V8.3 または OpenVMS Alpha V8.3 と OpenVMS VAX V7.3 |
OpenVMS I64 V8.3 |
OpenVMS I64 V8.3 と OpenVMS Alpha V8.3 |
注意
OpenVMS Cluster 内で混在させることが可能なアーキテクチャは 2 つだけです (OpenVMS I64 と OpenVMS Alpha,または OpenVMS Alpha と OpenVMS VAX)。 OpenVMS I64 と OpenVMS VAX の組み合わせはサポートされていません。 同じ OpenVMS Cluster 内でサポートされているバージョンは,どのアーキテクチャでも 1 つだけです (OpenVMS Alpha と OpenVMS I64 は V8.3,OpenVMS VAX は V7.3)。
システム・ディスクは,アーキテクチャごとに固有です。そのため,システム・ディスクを共用できるのは,アーキテクチャが同じシステム間だけです。 Alpha システムと I64 システム,また,Alpha システムと VAX システムは,同じシステム・ディスクからブートできません。 しかし,Alphaシステムと VAX システムの間では,クロス・アーキテクチャのサテライト・ブートがサポートされています。 クロス・アーキラクチャ・ブートが利用できるような OpenVMS Cluster を構成するときは,混在しているアーキテクチャごとに,インストールとアップグレードに使用できるディスクを備えたシステムを少なくとも 1 台ずつ確保してください。 詳細は,『HP OpenVMS Cluster 構成ガイド』と『HP OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
表 2-3
に,移行サポートの対象となるバージョンの組み合わせを示します。
表 2-3: 移行サポートの対象となるバージョンの組み合わせ
| 使用しているシステム | V8.3 に移行するバージョンとして組み合わせ可能なもの |
OpenVMS Alpha V8.3 または OpenVMS I64 V8.3 |
OpenVMS Alpha V8.2 OpenVMS Alpha V7.3-2 OpenVMS I64 V8.2-1 OpenVMS I64 V8.2 |
詳細は,次に示す OpenVMS テクニカル・ソフトウェア・サポート・サービスの Web サイトを参照してください。
http://www.hp.com/go/openvms/support
また,次の Web サイトにある OpenVMS オペレーティング・システムのサポート・チャートもご覧ください。
http://www.hp.com/go/openvms/supportchart
既存の OpenVMS Cluster に OpenVMS V8.3 システムを導入する場合は,その前に OpenVMS の旧バージョンが動作しているクラスタ・メンバへパッチ・キット (修正キット) をインストールしなければならないこともあります。 必要なパッチ・キットの一覧は,『HP OpenVMS V8.3 リリース・ノート[翻訳版]』に記載されています。
OpenVMS Cluster で TDC_RT ソフトウェアをサポートする方法については,7.9.8.5 項を参照してください。
2.4 OpenVMS Cluster に必要な情報
インストールの過程で,システムを OpenVMS Cluster のメンバにするかどうかを尋ねるプロンプトが表示されます。このプロンプトに対して YES と応答した場合は,システム・ディスクをブートした後に,次の情報を入力する必要があります。
| 必要な情報 | 説明 |
構成の種類 |
CI,DSSI,SCSI,ローカル・エリア,または複合インターコネクト。 構成の種類は,OpenVMS Cluster 内の VAX,Alpha,または Integrity サーバがコンピュータ間の相互通信に使用するインターコネクト・デバイスによって決まります。 なお,HP Integrity サーバでは,CI,DSSI,MEMORY CHANNEL の各デバイスはサポートされていません。 |
DECnet ノードの名前とアドレス |
OpenVMS オペレーティング・システムを現在インストールしようとしているコンピュータの DECnet ノード名とアドレス。 ネットワーク管理者またはシステム管理者に問い合わせてください。 DECnet-Plus for OpenVMS (Phase V) ソフトウェアのインストールを計画していて,DECnet Phase IV for OpenVMS のアドレスを使用する予定がなければ,この情報は入力する必要がありません。 |
割り当てクラスの値 |
インストールの最中に,OpenVMS オペレーティング・システムを現在インストールしようとしているコンピュータについて,その割り当てクラスの値 (ALLOCLASS) を尋ねられることがあります。 次に,その例を示します。
OpenVMS Cluster 環境では,割り当てクラスをゼロにできない場合があります。つまり,そのノードが他のクラスタ・メンバへ DSSI ディスクや CI ディスクを提供している場合や,このシステム上またはクラスタ内でボリュームのシャドウイングが使用されている場合は,割り当てクラスの値としてゼロを使用できません。 どちらの場合も,ALLOCLASS の値として使用できる範囲は 1〜255 です。 割り当てクラスの値を入力すると,インストール・プロシージャではその値を使用して,ALLOCLASS システム・パラメータの値を自動的に設定します。 『HP OpenVMS Cluster システム』のクラスタ・ストレージ・デバイスについての章を十分に見直してください。 このドキュメントには,割り当てクラスの値の指定に関するルールも記載されています。 |
クォーラム・ディスクが必要かどうか |
クラスタにクォーラム・ディスクが必要かどうかの判断には,『HP OpenVMS Cluster システム』が役立ちます。 |
ページ・ファイルとスワップ・ファイルの場所 |
クラスタ化されていないシステムではページ・ファイルとスワップ・ファイルが 1 台以上のローカル・ディスクにだけ存在していますが,クラスタ化されているシステムでは,それらが 1 台以上のローカル・ディスクまたはクラスタ化されたディスクに存在する可能性があります。 OpenVMS オペレーティング・システムをインストールしようとしているシステムでページ・ファイルとスワップ・ファイルがどこに置かれるかを調べる際は,『HP OpenVMS Cluster システム』 マニュアルが役立ちます。 |
MOP サーバ [脚注 1] ,ディスク・サーバ,およびテープ・サーバとして運用するシステム |
ローカル・エリア・クラスタまたは複合インターコネクト・クラスタをセットアップする場合は,それらを指定する必要があります。 |
クラスタのグループ番号とパスワード [脚注 2] |
セットアップするローカル・エリア・クラスタまたは複合インターコネクト・クラスタが Gigabit Ethernet LAN をベースにしている場合は,次のルールに従って,クラスタのグループ番号とパスワードを指定します。
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2.5 ターゲット・システム・ディスクがクラスタ内の他の場所にマウントされている場合のディスマウント
OpenVMS を OpenVMS Cluster 内のターゲット・ドライブにインストールする前に,ターゲット・システム・ドライブがクラスタ内の他の場所にマウントされていないことを確認してください。
ターゲット・システム・ディスクは,インストールを行わないシステムにもマウントされていることがあります。その場合は,それらをすべてディスマウントしてターゲット・システム・ティスクがインストール対象システムにだけマウントされている状態にし,その状態をインストールが完了するまで維持する必要があります。
クラスタ・ディスクのディスマウント方法については,5.5.2.3 項を参照してください。
2.6 インストールの開始
この章で示した作業をすべて完了したら,第 3 章へ進んでインストールを開始します。