ASU サーバが Tru64 UNIX オペレーティング・システムと相互にやりとりする方法は,ASU レジストリと呼ばれる中央のデータベースに格納されている値エントリに割り当てられている値に従います。
ASU レジストリは,大部分が
lanman.ini
ファイルを置換したものであり,このファイルは,以前,ASU ソフトウェアの構成に使用されていました。/usr/net/servers/lanman/regfiles/reg.ini
ファイルを参照すると,どの
lanman.ini
パラメータが ASU レジストリへ移動したかを確認することができます。
lanman.ini
ファイルのすべてのパラメータがレジストリに移動したのではなく,いくつかの構成パラメータでは,依然として
lanman.ini
ファイルが使用されます。
lanman.ini
ファイルについての詳細は,付録 C
を参照してください。
この章では,ASU レジストリ内の値エントリの値を参照したり変更したりする方法について説明します。
2.1 ASU レジストリの概要
ASU レジストリは,サブツリー,キー,サブキー,および値エントリの階層構造のデータベースであり,値エントリは,ASU サーバが Tru64 UNIX オペレーティング・システムと相互にやりとりする方法を決めます。
値エントリに割り当てられた値を変更することにより,ASU サーバの省略時の動作を変更します。値エントリを検索するには,サブツリーで始まるレジストリ・パスをたどります。ASU レジストリには,次のようなサブツリーがあります。
HKEY_LOCAL_MACHINE
--
ローカル・システムに関する情報が含まれています。
HKEY_USERS
--
ユーザのプロファイル情報が含まれています。
リモート・システムのユーザは,自分のコンピュータ上のレジストリにロードされているプロファイルを使用します。
サブツリーから,値エントリを検索しているキーおよび (多くの場合は) いくつかのサブキーを選択します。たとえば,図 2-1
は,UserServiceParameters
サブキーの値エントリへのレジストリ・パスが
HKEY_LOCAL_MACHINE
サブツリー,SYSTEM
キー,CurrentControlSet
サブキー,そして
Services
サブキーにあることを示しています。このレジストリ・パスは,次のように表示されます。
HKEY_LOCAL_MACHINE/SYSTEM/CurrentControlSet/Services/ UserServiceParameters
図 2-1: レジストリ・パス
図 2-2
に,HKEY_LOCAL_MACHINE
サブツリーのキーおよびサブキーのうちのいくつかを示します。
図 2-2: HKEY_LOCAL_MACHINE のキーおよびサブキー
図 2-3
に,HKEY_USERS
サブツリーのキーおよびサブキーのうちのいくつかを示します。
図 2-3: HKEY_USERS のキーおよびサブキー
通常,サブキーには複数の値エントリがあります。各値エントリは,ASU サーバと Tru64 UNIX が特定のタスクに関して相互にやりとりする方法を定義します。
レジストリ値エントリについての詳しい説明は,付録 B を参照してください。
次の図は,値エントリの例です。
値エントリの 3 つの部分は次のとおりです。
名前 (Name) -- 値エントリの名前
データ・タイプ (Data Type) -- 値エントリのクラスまたはタイプ
値 (Value) -- 値エントリに割り当てられている値。値のタイプはデータ・タイプによって異なります。表 2-1 を参照してください。
| データ・タイプ | 値のタイプ |
| REG_SZ | 判読可能なテキストで表す一連の文字。次の例は,UserComment
が
ASU
であることを示している。UserComment:REG_SZ:ASU |
複数の語の場合は引用符で囲む。次の例は,UserComment
が
ASU user
であることを示している。
UserComment:REG_SZ:"ASU user" |
|
| REG_DWORD | 4 バイト長の数字。このタイプの値エントリは,バイナリ,16 進数,または 10 進数のフォーマットで表示される。次の例は,大文字/小文字の混在のサポートを有効にする値エントリを示している。
MixedCaseSupport:REG_DWORD:1 |
| REG_EXPAND_SZ | 展開可能なデータ文字列。アプリケーションから呼び出されたときに置き換えられる変数を含むテキスト。たとえば,次のような値エントリでは,文字列
%SystemRoot%
が,ASU システム・ファイルを収めたディレクトリの実際の場所に置き換えられる。
File:REG_EXPAND_SZ:%SystemRoot%\file.exe |
| REG_MULTI_SZ | リストや複数の値などの判読可能なテキスト内の複数文字列。各エントリは,NULL 文字で区切る。次の例は,Administrator と peter は,警告メッセージを受け取るユーザであることを示している。
AlertNames:REG_MULTI_SZ:Administrator peter |
値エントリには省略時の値が割り当てられています。省略時の値は変更することができますが,誤った値を指定すると,ASU ソフトウェアの障害など,予期しない結果を生じることがあります。
次のインタフェースを使用して,レジストリ・キーの参照および変更を行うことができます。
regconfig
コマンド -- Tru64 UNIX コマンド行インタフェース
レジストリ エディタ -- Windows ベースのインタフェース
ASU Administrator -- Windows ベースのインタフェース
システム ポリシー エディタ -- Windows ベースのインタフェース
注意
ASU のレジストリに対するほとんどの変更を有効にするには,ASU サーバを停止した後に再起動する必要があります。
regconfig
コマンドは,ASU ソフトウェアを実行しているシステムで,Tru64 UNIX コマンド・プロンプトから入力するコマンドです。
すべてのキー,サブキー,および値エントリに関する情報を表示するには,次のように入力します。
#
regconfig
-l
1 つのキー,サブキー,および値エントリに関する特定の情報を表示するには,完全なレジストリ・パスを指定する必要があります。たとえば,UserServiceParameters
サブキーの値エントリに関する情報を表示するには,次のコマンドを入力します。行末のバックスラッシュ (\) は,そのコマンド行が次の行に続くことを示しています。コマンド全体を入力したら,Enter キーを押してください。
# regconfig System/CurrentControlSet/Services/\ AdvancedServer/UserServiceParameters
出力は次のようになります。この出力には,UserServiceParameters
サブキーの各値エントリの名前,データ・タイプ,および値が示されています。
CreateUnixUser:REG_DWORD:1 DeleteUnixHomeDirectory:REG_DWORD:0 Exclude:REG_SZ:0-100 ForceUniqueUnixUserAccount:REG_DWORD:0 GroupUpdateTime:REG_DWORD:3600 MapExistingUnixUser:REG_DWORD:0 MinUnixUid:REG_DWORD:32767 NewUserShell:REG_SZ:/bin/sh NISPasswordFile:REG_SZ:/var/yp/src/passwd SpreadUnixHomeDirectory:REG_DWORD:0 SyncUnixHomeDirectory:REG_DWORD:0 SyncUnixPassword:REG_DWORD:0 UseNIS:REG_DWORD:0 UserComment:REG_SZ:Advanced Server for UNIX user UserRemark:REG_SZ:Users Directory
値エントリの値を変更するには,次のものを指定する必要があります。
値エントリの完全なレジストリ・パス
値エントリの名前
値エントリのタイプ
値エントリの新しい値
たとえば,UserComment
の値を
ASU user
に変更するには,次のコマンドを入力します。行末のバックスラッシュ (\) は,そのコマンド行が次の行に続くことを示しています。コマンド全体を入力したら,Enter キーを押してください。
# regconfig System/CurrentControlSet/Services/\ AdvancedServer/UserServiceParameters UserComment \ REG_SZ "ASU user"
regconfig
コマンドについての詳細は,
regconfig(8)2.2.2 レジストリ エディタ
レジストリ エディタは,Windows NT が稼働しているシステムで使用できる Windows ベースのインタフェースです。
注意
Windows 95 のレジストリ エディタを使用して,ASU レジストリをリモートで編集することはできません。
Windows NT システム上でレジストリ エディタを起動するには,次の手順に従います。
ASU 管理者アカウントを使用して,Windows NT システムにログインします。
regedt32.exe
アプリケーションを実行します。このアプリケーションは,%SystemRoot%¥system32
フォルダに格納されています。
レジストリ エディタを起動すると,ローカル・コンピュータのレジストリについての各サブツリー用に 1 つのウィンドウがオープンします。
[レジストリ] メニューの [コンピュータの選択] を選択します。
[コンピュータ:] フィールドに ASU サーバの名前を入力します。
[OK] ボタンをクリックします。
ASU レジストリに接続すると,HKEY_USERS
および
HKEY_LOCAL_MACHINE
サブツリーが表示されます。
レジストリ エディタではレジストリ情報は 2 つの枠内に表示されます。次の図に示すように,キーとサブキーが左側の枠内に表示され,それらに対応する値エントリが右側の枠内に表示されます。
値を変更するには,次の手順に従います。
値エントリをダブル・クリックします。
前の図に示すように [文字列エディタ] ダイアログ・ボックスが表示されます。
文字列フィールドに新しい値を入力します。
[OK] ボタンをクリックします。
システム ポリシー エディタは Windows ベースのユーティリティであり,これを使用すると,ポリシーを参照したり管理したりすることができます。ポリシーとは,ASU サーバを実行するシステムへのログイン時に,特定の Windows コンピュータ,ユーザ,ユーザ・グループに対して環境を定義するものです。
システム ポリシー エディタを使用すると,次の設定を行うことができます。
ユーザ固有のポリシー -- 各ドメイン・ユーザまたはグループに適用される。ポリシーのほとんどは,ユーザ固有である。ユーザ固有のポリシーは,常にレジストリの
HKEY_CURRENT_USER
キーにマージされる。
マシン固有のポリシー -- Windows システム上の全ユーザに適用されるが,ユーザがコンピュータ間を移動しても,ユーザに追随するものではないため,ユーザによって変わることはない。マシン固有のポリシーは,常にレジストリの
HKEY_LOCAL_MACHINE
キーにマージされる。
システム ポリシー エディタの設定を 1 つのポリシー・ファイル (.POL) に保存します。ユーザがログオンすると,ポリシー・ダウンローダというプログラムが起動します。ポリシー・ダウンローダは,すべての Windows クライアントにインストールされています。ポリシー・ダウンローダは,ネットワークからポリシー・ファイルを見つけ,それをオープンし,ローカル・コンピュータ名またはユーザ名が使用されているエントリを探して,ポリシー・ファイルに定義されているとおりに,管理者のレジストリ設定をローカル・レジストリにマージします。 ダウンローダが,ポリシー・ファイル内でローカル・コンピュータ名またはユーザ名の付いたエントリを発見できない場合は,DEFAULT USER
または
DEFAULT COMPUTER
エントリを探し,これらのレジストリ設定を使用してマージします。 特定のユーザまたはコンピュータについてのエントリがなく,省略時のエントリも存在しない場合,マージは行われません。
システム ポリシー エディタは,Client-based Advanced Server Administration Tools サブセットに入っています。Policy Administrator のインストールについての詳細は,1.8 節を参照してください。
システム ポリシー エディタの起動時には,ポリシー・ファイルにエントリを持つユーザおよびコンピュータのアイコンが表示されます。
ポリシー管理についての詳細は,システム ポリシー エディタのオンライン・ヘルプを参照してください。
2.2.4 ASU Administrator
ASU Administrator は,Windows NT ベースのインタフェースです。ASU Administrator では,他のレジストリ エディタとは異なり,ほとんどの値エントリに対して,設定可能な値の一覧から選択することができます。このため,レジストリに誤った値を入力する恐れが少なくなります。
2.2.4.1 ASU Administrator インタフェースのインストール
ASU Administrator インタフェースをインストールするには,次の手順に従ってください。
Tru64 UNIX システム上に, Client-based Advanced Server Administration Tools サブセットがインストールされていることを確認します。たとえば,次のコマンドを入力します。
#
setld
-i
|grep ASUADM |grep
-v
not |grep installed
ASUADMnnn
が表示された場合には,そのサブセットがインストールされています。そうでない場合は,ASUADMnnn
サブセットをインストールする必要があります。ASU サブセットのインストールについての詳細は,1.3 節を参照してください。
asusetup
プロシージャの実行中に作成された ASU 管理者アカウントを使用して,Windows NT が稼働しているシステムにログインします。
ネットワーク・ドライブを
astools
ディスク共有にマップします。
asuadm
フォルダを展開します。
setup.bat
プログラムを実行します。
ASU Administrator インタフェースがインストールされると,astools
ディスク共有へのネットワーク・ドライブを切断して,ASU Administrator インタフェース (c:¥winnt¥system32¥asuadm.exe) のアイコンを作成します。
2.2.4.2 ASU Administrator インタフェースの使用
ASU Administrator インタフェースを使用する場合は,次の手順に従います。
asusetup
プロシージャの実行中に作成された ASU 管理者アカウントを使用して,Windows NT システムにログインします。
Windows NT システムの
%SystemRoot%¥system32
フォルダにある
asuadm.exe
アプリケーションを実行します。
ASU Administrator インタフェースが起動して,[Select Computer] ダイアログ・ボックスが表示されます。
レジストリ値を表示または変更したいシステムについて,次のいずれかの操作を行います。
[Computer] フィールドでシステム名を入力する。
[Select Computer] ウィンドウでシステム名をクリックする。
[OK] ボタンをクリックします。
[Policy] タブをクリックします。ポリシーは,レジストリ・キーやサブキーに似ています。
[Policy for:] ウィンドウで,値エントリを表示または変更したいポリシーをクリックします。
[Properties] ボタンをクリックします。
ポリシーの [Properties] ウィンドウが表示されます。このウィンドウには値エントリに似た記述が表示されます。各記述の横にはその値も表示されます。
値は,その種類に応じて,次のいずれかの方法で変更します。
ボックスをクリックして値エントリを有効または無効にする。ボックス内のチェックマークは,値エントリが有効であることを示している。
項目リストから値を選択する。
次の図は,ASU Administrator の [Properties] ダイアログ・ボックスを示しています。
次に,ASU Administrator ポリシーとそれに関連するレジストリ値エントリを示します。
Alerter Service
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥Alerter¥Parameters IncludeMessageHeader IncludeMessageHeader NotOnNetworkCacheTimeout
Computer Browser Service
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥Browser¥Parameters MasterUpdate BackupUpdate BackupRecovery MoreLog
Connected Clients
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥Netlogon¥Parameters LogonQuery QueryDelay RelogonDelay
Connected Clients
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥LanmanServer¥Parameters AutoDisconnect
File Name Space Mapping
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥AdvancedServer¥FileServiceParameters NameSpaceMapping UniqueSuffixLength MixedCaseSupport TruncatedExtensions MappingSeparator
Netlogon Service
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥Netlogon¥Parameters Scripts Pulse (PDC のみ) Update (BDC のみ) Randomize (BDC のみ) SSIPasswdAge (BDC のみ)
Server Announcement
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥LanmanServer¥Parameters Hidden SrvAnnounce SrvAnnounce
Tru64 UNIX Account Mapping
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥AdvancedServer¥FileServiceParameters CreateUnixUser
Tru64 UNIX File System Integration
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥AdvancedServer¥FileServiceParameters IgnoreUnixPermissions UnixDirectoryCheck UnixFilePerms UnixDirectoryPerms UseUnixGroups UseUnixLocks RootOwnsFilesCreatedOnNFS
UPS Service
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥UPS¥Parameters IgnoreSIGPWR PowerFailAddress PowerFailMessage PowerMessageInterval
Users Alerts
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥AdvancedServer¥AlertParameters AertAdminOnLicenseOverFlow AlertUserOnLicenseOverFlow
Users Alerts
SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥LanmanServer¥Parameters AccessAlert ErrorAlert LogonAlert